CO2濃度430ppm突破、過去数百年で最高水準に|NOAA・スクリプス海洋研究所が警告

CO2濃度430ppm突破、過去数百年で最高水準に|NOAA・スクリプス海洋研究所が警告 - innovaTopia - (イノベトピア)

NOAA(アメリカ海洋大気庁)とスクリプス海洋研究所が発表した報告によると、ハワイのマウナロア観測所で測定された2025年5月の大気中二酸化炭素濃度の月平均値が430.51ppmに達し、初めて430ppmを超えた。この数値は2024年5月の426.90ppmから3.61ppm増加している。

5月は二酸化炭素濃度がピークを迎える時期であり、その後、生育期には濃度が低下し、秋に植物が枯れ始めると再び上昇する。
1958年にチャールズ・デイビッド・キーリング氏が開始したCO2監視記録(キーリング曲線)として知られるこの測定値は、近年5月になると新たな記録を更新し続けており、今年は過去数百年で最高水準である。

標高3,400メートルに位置するマウナロア観測所は、北半球の平均的な大気状態を代表する世界的な基準観測地点である。NOAAは1974年5月から独自の測定を開始し、スクリプス海洋研究所と並行して観測を継続している。

From: 文献リンクIt’s been millions of years since Earth’s atmosphere had this much CO2

【編集部解説】

実際の状況を整理すると、NOAAの公式データによる2025年5月の実測値430.51ppmは、2024年5月の426.90ppmから3.61ppm増加しており、これは年間増加率として過去最大級の上昇を示しています。

技術的背景の解説

マウナロア観測所での測定は、1958年にチャールズ・デイビッド・キーリング博士が開始した世界最長の連続CO2観測記録です。標高3,400メートルという立地により、局地的な汚染源の影響を受けにくく、北半球の平均的な大気状態を代表する基準点として機能しています。

NOAAは1974年5月から独自のCO2測定を開始し、スクリプス海洋研究所と並行して観測を継続してきました。毎月の平均値は日平均の平均として算出され、日平均は時間平均に基づいていますが、「バックグラウンド」条件が優勢な時間のみが対象となります。

影響範囲と将来への示唆

今回の430.51ppmという数値が示す最も深刻な問題は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が設定した1.5℃目標達成に必要な削減ペースを大幅に上回っていることです。1.5℃シナリオでは年間増加率を約1.8ppmに抑える必要がありますが、2024-2025年の増加率3.61ppmは目標値の約2倍に達しています。

この急激な上昇は、単なる数値の問題ではなく、地球システム全体の不可逆的変化を意味します。大気中CO2濃度がこの水準に達したのは鮮新世中期(約300万年前)以来とされ、当時の海面は現在より15-25メートル高かったとされています。

技術革新への影響

この状況は、炭素除去技術(DAC:Direct Air Capture)や炭素利用技術(CCU:Carbon Capture and Utilization)への投資加速を促進する可能性があります。従来の排出削減だけでは追いつかない現実が明確になったことで、大気中のCO2を直接回収する技術への注目が高まるでしょう。

また、衛星による全球CO2監視システムの重要性も増しています。地上観測点だけでは把握しきれない地域的変動や排出源の特定に、宇宙からの観測技術が不可欠となっています。

経済・政策への波及効果

この数値は、カーボンプライシング制度の強化や炭素税の導入議論を加速させる要因となります。企業にとっては、ESG投資の観点からより厳格な脱炭素戦略が求められることになるでしょう。

一方で、化石燃料からの急激な転換は経済的混乱を招く可能性もあり、公正な移行(Just Transition)の重要性が増しています。

【用語解説】

キーリング曲線(Keeling Curve)
1958年にチャールズ・デイビッド・キーリング博士がハワイのマウナロア観測所で開始した大気中CO2濃度の連続測定記録をグラフ化したもの。世界最長の大気CO2観測データとして、気候変動研究の基礎となっている。

ppm(parts per million)
100万分の1を表す濃度単位。大気中のCO2濃度測定に使用され、430ppmは大気100万個の分子のうち430個がCO2分子であることを意味する。

バックグラウンド条件
マウナロア観測所での測定において、局地的な汚染源や気象条件の影響を受けない、大気の平均的な状態を示す条件。この条件下でのみ測定データが採用される。

鮮新世中期
約500万年前から260万年前の地質時代。現在と同程度のCO2濃度(400ppm以上)が存在し、海面が現在より15-25メートル高く、北極に氷がなかった時代。

【参考リンク】

NOAA Global Monitoring Laboratory(外部)
NOAAが運営するマウナロア観測所のCO2測定データを公開する公式サイト

スクリプス海洋研究所(外部)
キーリング曲線の測定を継続している世界有数の海洋・地球科学研究センター

NOAA(アメリカ海洋大気庁)(外部)
アメリカ商務省所管の海洋・大気研究機関で気候変動監視を担当

マウナロア観測所について(外部)
ハワイ島標高3,400メートルに位置する世界の大気CO2監視の基準点

【参考動画】

【参考記事】

Trends in CO2 – Global Monitoring Laboratory(外部)
NOAA公式による最新CO2測定データ。2025年5月の月平均値430.51ppmを正式発表

Mauna Loa carbon dioxide forecast for 2025(外部)
イギリス気象庁による2025年CO2濃度予測。実測値が予測を上回った

Climate change: atmospheric carbon dioxide(外部)
2024年の全球平均CO2濃度422.8ppmという記録的数値とその歴史的意義を詳細分析

【編集部後記】

この記録的なCO2濃度430.51ppmという数値を受けて、皆さんはどのような技術的解決策に注目されていますか?直接空気回収(DAC)技術やカーボンニュートラル燃料の開発など、従来の削減アプローチを超えた革新的な取り組みが世界各地で始まっています。

また、個人レベルでもスマートホームやEV導入といった選択肢が広がっていますが、実際に効果を感じられる技術や製品があれば、ぜひSNSで共有していただけませんか?

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TaTsu
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