Blender Studioは2025年7月11日、無料探索ゲーム「DOGWALK」をSteamで公開した。BlenderとGodotのみで開発された本作は公開後48時間でSteam無料チャート1位に到達し、同時接続ピーク465人を記録した。7月15日時点のレビューは523件、好評率98%である。ソースコードはGPL v3、アセットはCC BY 4.0で配布され、有料DLC「Supporter Pack」も提供されている。
From: Blender developers released a free-to-play game that topped the Steam charts two days after release
【編集部解説】
「DOGWALK」はBlenderとGodotという完全オープンソースツールのみで制作され、Steamで商業的成功を収めました。Unityの料金改定問題以降、代替エンジンを模索する開発者が増える中、本作は「OSSでも十分にヒットを狙える」ことを実証しています。
技術面ではGrease Pencilで描いた2DアニメをglTF経由でGodotへ自動インポートする専用プラグインを構築し、リード表現には標準Line3Dノードとカスタムシェーダを組み合わせて滑らかな曲線を実装しました。
一方、ソース一式を同梱した有料DLC「Supporter Pack」は、GPLの再配布義務と収益確保のバランスを探る試みとして議論を呼んでいます。OSSツールは更新頻度が高いため、長期的にはバージョン差異による保守負荷が課題となる可能性もあります。
とはいえ教育機関や小規模スタジオにとってライセンス費ゼロで成果を上げた本事例は大きな追い風となり、Godotが次期バージョンでアニメーションシステムを刷新予定である点を踏まえると、映像とゲーム制作の垣根はさらに低くなるでしょう。
【用語解説】
Grease Pencil:Blenderの2Dドロー/アニメ機能。3D空間に手描き線を描き2Dと3Dを融合できる。
glTF:軽量な3Dデータ交換フォーマット。PBRマテリアルを標準サポートしツール間連携を容易にする。
GPL v3:改変物も同ライセンス公開を義務付けるフリーソフトウェアライセンス。
CC BY 4.0:クレジット表記を条件に商用利用・改変・再配布を許可する著作権ライセンス。
Supporter Pack:DOGWALKのソースコード・アセット一式を同梱した有料DLC。学習用途に利用可能。
【参考リンク】
Godot Engine(外部)MITライセンスの2D/3Dゲームエンジン公式サイト。ダウンロード・ドキュメント・コミュニティ情報を提供。
Blender Studio(外部)Blender公式制作部門。映画やゲームの制作データを無償公開し学習と再利用を支援するサイト。
DOGWALK – Steam(外部)無料短編ゲーム本編を配信。レビューやシステム要件、ライセンス情報などを確認できる。
【参考記事】
DOGWALK – SteamDB Charts(外部)同時接続数・レビュー統計を提供し、チャート1位到達と好評率98%の数値を裏付ける。
Free game DOGWALK launches to ‘overwhelmingly positive’ reviews(外部)Supporter Packの内容とライセンス方針を詳報し、コミュニティの反応を紹介する日本語記事。
DOGWALK Release: Save the Date!(外部)Blender Studio公式ブログ。リリース日時と開発目標、パイプライン概要を事前告知した投稿。
【編集部後記】
『DOGWALK』が示したOSS開発の可能性を、皆さんはどの工程から試してみたいでしょうか? 感じた疑問や挑戦したいアイデアがあればコメントで共有してください。共に学び合いながら、オープンソースの楽しさと課題を探求していければうれしいです。