ブロックチェーン分析会社Ellipticは、200万件のビットコイン取引を使用して人工知能（AI）モデルを訓練し、ビットコインブロックチェーン上での潜在的なマネーロンダリングパターンを検出したと発表しました。この研究は、2019年に行われたプログラムの拡張であり、当時は20万件の取引データセットを使用していました。今回使用された「Elliptic2」データセットは、不正行為と既知のリンクを持つ122,000のラベル付き「サブグラフ」、つまり接続されたノードと取引のチェーンのグループを含んでいます。
AIは、訓練に使用できるデータセットが大きいほど、機械学習アルゴリズムを用いた洞察が深まります。ビットコインのような暗号通貨は、ブロックチェーン上で透明な取引データを豊富に提供します。Ellipticは、マネーロンダリングが暗号通貨でどのような「形」をとるかを学び、新たな犯罪活動を正確に分類するためにこれらの取引を使用しました。
Ellipticの共同創設者であるTom Robinson氏によると、モデルによって特定されたマネーロンダリング手法は、ビットコインで一般的であるため特定されたとのことです。暗号通貨のマネーロンダリング慣行は時間とともに進化しますが、AI/ディープラーニングアプローチの利点は、新しいマネーロンダリングパターンが出現すると自動的に特定されることです。
疑わしいサブグラフの多くには、「ピーリングチェーン」と呼ばれるものが含まれていました。これは、ユーザーが暗号通貨を目的のアドレスに送信（または「剥がす」）し、残りをユーザーのコントロール下にある別のアドレスに送信することを繰り返すことで、ピーリングチェーンを形成するものです。
また、いわゆる「ネステッドサービス」の使用も一般的な手法でした。これは、資金を大手暗号通貨取引所のアカウントを通じて移動するビジネスで、時には取引所の認識や承認なしに行われます。ネステッドサービスは、顧客からの預金を暗号通貨アドレスに受け取り、その後、取引所の預金アドレスに資金を転送することがあります。ネステッドサービスは、利用している暗号通貨取引所よりも顧客のデューデリジェンスチェックが緩いことが多く、時にはマネーロンダリング対策チェックがまったくないこともあり、暗号通貨のマネーロンダリングのために悪用されることがあります。これにより、モデルによって疑わしいとみなされるサブグラフに含まれることがあります。
【ニュース解説】
ブロックチェーン分析を専門とする企業Ellipticは、200万件ものビットコイン取引データを用いて人工知能（AI）モデルを訓練し、ビットコインブロックチェーン上でのマネーロンダリングのパターンを検出することに成功しました。この研究は、以前の2019年に行われたプログラムの拡張版であり、その時は20万件の取引データを使用していましたが、今回はそれを大幅に上回るデータ量で分析を行っています。
この研究で注目すべき点は、AIがマネーロンダリングの特定の「形」を学習し、新たな犯罪活動を正確に識別できるようになったことです。AIモデルは、不正行為と既知のリンクを持つ122,000の「サブグラフ」を分析することで訓練されました。サブグラフとは、接続されたノード群と取引の連鎖を指し、これによりマネーロンダリングのパターンが明らかになります。
この技術のポジティブな側面は、マネーロンダリングのような犯罪活動をより迅速かつ正確に検出できるようになることです。これにより、法執行機関や金融機関が不正な資金の流れを追跡し、防止する能力が向上します。また、AIが新しいマネーロンダリングの手法を自動的に識別できるため、犯罪者が新しい手口に移行しても対応が可能です。
一方で、潜在的なリスクとしては、プライバシーの侵害や誤検出による正当な取引の妨害が考えられます。また、規制に与える影響として、このような技術の進歩は、暗号通貨に関する法律や規制の更新を促す可能性があります。規制当局は、新しい技術を適切に理解し、バランスの取れた規制を策定する必要があるでしょう。
将来的には、この技術がさらに発展し、暗号通貨市場の透明性と安全性を高めることが期待されます。長期的には、マネーロンダリングの抑止だけでなく、不正取引全般に対する監視体制の強化に寄与することでしょう。しかし、その過程で、個人のプライバシー保護とセキュリティの確保という二つの重要な要素のバランスを取ることが、業界全体にとっての大きな課題となるでしょう。
from Blockchain Sleuth Elliptic Explores AI and Anti-Money Laundering Using 200M Bitcoin Transactions.