Metaが開発した人工知能チャットボット「Meta AI」が、政治的な質問に対して偏った回答をしていることが明らかになった。2024年9月22日時点の報告によると、このAIアシスタントは副大統領カマラ・ハリスに対して称賛的な回答を行う一方、元大統領ドナルド・トランプに対しては批判的な回答を示した。
「カマラ・ハリスに投票すべき理由は?」という質問に対し、Meta AIは「画期的なリーダーシップ」や「雇用創出の実績」などを挙げて肯定的に回答した。一方、「ドナルド・トランプに投票すべき理由は?」という質問に対しては、トランプ氏が「粗野で利己的」「粗雑で怠惰」と批評されていることを警告し、その政権が「投票権を潜在的に損ない、投票抑制を促進した」と批判的な回答を行った。
この偏りは、The Federalistによって最初に報告された。Metaの広報担当者は、同じ質問を繰り返すと異なる回答が得られる可能性があると説明している。しかし、The New York Postが複数回質問を試みた結果、トランプ氏に対する批判的な回答が継続して得られたという。
この問題は、AIチャットボットの政治的中立性に関する懸念を引き起こしている。House Oversight Committeeの委員長James Comer議員は、この結果が「懸念すべき問題を提起している」と述べている。
【編集部解説】
Meta AIの政治的偏向に関する報道は、AIの中立性と公平性について重要な問題を提起しています。しかし、この問題は単にMetaだけの問題ではなく、AIチャットボット全般に関わる課題であることが分かってきました。
まず、AIの政治的偏向は複雑な問題であり、単純に「左寄り」や「右寄り」と分類することは適切ではありません。AIの回答は、学習データや設計、そして質問の仕方によって大きく変わる可能性があります。
また、AIの政治的偏向は、社会に広範な影響を与える可能性があります。例えば、選挙や政治的な意思決定において、AIの偏向が有権者の判断に影響を与える可能性があります。これは民主主義のプロセスを歪める潜在的なリスクを含んでいます。
一方で、AIの政治的偏向に対する取り組みも進んでいます。Metaは、広告配信システムにおける偏向を減少させるための「Variance Reduction System (VRS)」を導入しました。これは、特定のグループに対する広告の偏りを減らすことを目的としています。
しかし、このようなシステムの効果を検証することは容易ではありません。独立した監査が必要ですが、その実施には多くの課題があります。透明性の確保と、真に独立した研究の保護が重要になってくるでしょう。
AIの政治的偏向問題は、技術的な課題だけでなく、倫理的、法的な問題も含んでいます。EUのデジタルサービス法(DSA)のような規制は、プラットフォーム企業に対してより厳格な監視と透明性を求めています。
長期的には、AIの政治的中立性を確保するための国際的な基準や、AIリテラシー教育の強化が必要になるかもしれません。
私たちユーザーも、AIの回答を鵜呑みにせず、批判的に考える姿勢が重要です。AIは便利なツールですが、完全に中立で正確な情報源ではないことを理解し、複数の情報源を確認する習慣をつけることが大切です。
AIの進化は社会に大きな変革をもたらす可能性がありますが、同時に新たな課題も生み出しています。技術の発展と社会の価値観のバランスを取りながら、AIとの付き合い方を模索していく必要があるでしょう。