2025年7月15日、AnthropicのAIアシスタントClaudeがCanvaとの統合を開始した。
この統合は2025年5月にリリースされた「Connectors Directory」の一環で、Model Context Protocol(MCP)を通じて実現された。ユーザーはClaude内でCanvaデザインの作成、編集、管理が可能になった。
機能を利用するには有料のCanvaアカウント(月額15ドル)と有料のClaudeアカウント(月額17ドル)が必要である。
ClaudeはCanvaのデザインワークフローをMCPでサポートする初のAIアシスタントで、プレゼンテーション作成、画像リサイズ、テンプレート自動入力、既存デザインの検索とエクスポート、PDFや画像としての出力などの機能を自然言語プロンプトで実行できる。
MCPは「AIアプリのUSB-Cポート」と呼ばれるオープンソース標準で、現在Atlassian、Zapier、Asana、Stripe、Figmaなど10以上のサービスが利用可能である。
Canva Ecosystem責任者のAnwar Haneefは、手動でのアイデア転送が不要になり、AI中心のワークフローを実現するとコメントした。
From: Anthropic’s Claude chatbot can now make and edit your Canva designs
【編集部解説】
このニュースは、AI業界における重要なインフラストラクチャーの進化を示す象徴的な出来事です。2025年5月に開始されたClaude の「Connectors Directory」は、AIが「道具」から「同僚」へと進化する転換点を表しています。
Model Context Protocol(MCP)の戦略的意義
MCPは2024年11月にAnthropicが発表したオープンソース標準で、JSON-RPC 2.0をベースとしています。従来のAI利用では毎回プロジェクトの詳細を説明する必要がありましたが、MCPによりClaudeはプロジェクト履歴、タスク状況、組織の知識を深く理解し、文脈に基づいた専門的な協力者として機能するようになりました。
現在、Canvaをはじめ、Atlassian(JiraとConfluence)、Zapier、Cloudflare、Intercom、Square、PayPal、Sentry、Linear、Plaid、Asanaなど10以上のサービスが利用可能で、今後はGitLab、Boxなどの追加も予定されています。
Canva統合の技術的革新
ClaudeがCanvaとの直接連携を可能にした初のAIアシスタントである点が重要です。単なるテンプレート生成にとどまらず、テンプレートの自動生成、リサイズ機能、ブランド一貫性の維持、プレゼンテーション作成など、包括的なデザインワークフローを実現しています。
特に「会話をCanvaプロジェクトに数秒で変換」という機能は、従来のデザイン制作プロセスを根本的に変革する可能性を秘めています。Canva社内のケーススタディでは、従業員の65%が「毎日」または「頻繁に」AIを使用して生産性を向上させているとのデータも報告されています。
Visual Suite 2.0との相乗効果
2025年4月にCanvaが発表した「Visual Suite 2.0」により、これまで個別に提供されていたプレゼンテーション作成、動画編集、ドキュメント制作、ホワイトボード機能が統合されました。Claude統合はこの基盤上で動作するため、より幅広いクリエイティブタスクでAIアシスタントが活用できるようになっています。
業界への波及効果
この統合は単なる機能追加ではなく、AI業界全体の発展方向を示しています。オープンスタンダードに基づく柔軟な統合により、今後さらに多くのサービスでAIとの連携が加速すると予想されます。
長期的な展望
MCPの普及により、AIエージェントがより多くのアプリケーションと連携し、包括的なワークフローを構築する未来が現実味を帯びてきました。これは人間とAIの協働による新しい創造性の形を実現する可能性を示しており、デザイン業界のみならず、幅広い業界での生産性向上に寄与することが期待されます。
【用語解説】
Model Context Protocol(MCP)
2024年11月にAnthropicが発表したオープンソース標準。AIアシスタントと外部データソースやツールとの間でシームレスな統合を可能にする。「AIアプリのUSB-Cポート」とも呼ばれる。
Connectors Directory
2025年5月にClaude AIにリリースされた機能。ノーコードでのアプリ連携を可能にし、AIが「道具」から「同僚」へと進化することを実現したシステム。
Visual Suite 2.0
2025年4月にCanvaが発表した統合プラットフォーム。プレゼンテーション作成、動画編集、ドキュメント制作、ホワイトボード機能を一つに統合した。
自然言語プロンプト
人間が普通に使う言葉でAIに指示を出すこと。プログラミング言語ではなく、日常的な言葉でAIとやり取りができる技術。
JSON-RPC 2.0
リモートプロシージャコール(RPC)を実装するための軽量なデータ交換プロトコル。MCPの基盤技術として使用されている。
【参考リンク】
Anthropic(外部)
AI安全性と研究に特化したサンフランシスコ拠点の企業。信頼性が高く、解釈可能で制御可能なAIシステムの構築を目指している。
Claude AI(外部)
Anthropicが開発したAIアシスタント。安全で正確、かつセキュアな次世代AIとして、ユーザーの最高の仕事をサポートするよう設計されている。
Canva(外部)
グラフィックデザインプラットフォーム。ソーシャルメディアグラフィック、プレゼンテーション、ウェブサイト作成ツールを提供している。
Model Context Protocol(外部)LLMアプリケーションと外部データソースやツールとの間でシームレスな統合を可能にするオープンプロトコル。
Canva MCP サーバー設定ガイド(外部)AIアシスタントをCanva MCPサーバーでCanvaに接続するための公式セットアップガイド。
【参考動画】
【参考記事】
Claude「Connectors Directory」でAIが同僚になる時代(外部)
2025年5月にリリースされたClaude の「Connectors Directory」について詳細に解説。AIが「道具」から「同僚」へと進化する過程を分析している。
Anthropicの「Claude」、外部アプリや外部サイトとの連携が可能に(外部)
ZDNet Japanが報じたClaude の外部アプリ連携機能について。Stripe、Figma、Canvaなどとの連携の仕組みを技術的観点から解説している。
【編集部後記】
ClaudeとCanvaの統合は、私たちの働き方を根本的に変える可能性を秘めた革新です。皆さんは日々の業務で「アイデアはあるのに、それを形にするのに時間がかかる」「複数のアプリを行き来するのが面倒」と感じることはありませんか?
今回の統合により、AIがまさに「同僚」のような存在になりつつあります。これは単なる効率化を超えて、創造性そのものを拡張する可能性を示しているのかもしれません。
皆さんはこの変化をどう捉えていらっしゃいますか?AIとの協働により、私たちの「創る」という行為はどのように進化していくのでしょうか。ぜひ皆さんの視点やご体験をお聞かせください。