OpenAI、ChatGPTに学習支援機能「Study Together」追加実験 Deep ResearchのSlack統合で企業活用拡大

[更新]2025年7月18日16:44

 - innovaTopia - (イノベトピア)

OpenAIが教育と職場研究領域でChatGPTの機能拡張を進めている。テスト中の新機能として、5月に初めて発見された「Study Together」機能がある。この機能は学生が友人と共同で、またはChatGPTを学習パートナーとして試験準備を行うことを可能にする。現在は限定的なテスト段階で、一部ユーザーに表示されているものの完全には機能していないが、プラットフォーム内での協働的・教育的使用を示す方向性である。

同時にOpenAIはDeep Research機能のアップデートも進めている。Deep Researchはユーザーの入力に基づいて情報収集と整理を自動化するAI機能である。新たにSlack統合が追加され、ChatGPTがワークスペース内のメッセージにアクセスして研究タスクに活用できる。この統合はAIPRM社のリードエンジニアであるTibor Blaho氏によって発見された。

From:
文献リンクOpenAI Experiments with Study Feature and New ChatGPT Integrations

【編集部解説】

今回のOpenAIの動きは、従来のチャットボットという枠を超えた戦略的転換を示しています。特に注目すべきは、AIが単なる「答えを提供する道具」から「学習プロセスを支援するパートナー」へと進化していることです。

Study Together機能は、従来のChatGPTが抱えていた教育現場での問題を解決する可能性を秘めています。これまでChatGPTは学生の代わりに課題を完成させる「カンニング・ツール」として問題視されてきました。しかし、新機能では逆に学生に質問を投げかけ、思考過程を促進する仕組みになっています。

これは教育心理学でいう「ソクラテス式問答法」のデジタル版といえるでしょう。AIが教師のように学習者の理解度を確認しながら、段階的に知識を構築していくアプローチです。従来の一方通行的な情報提供から、双方向的な学習支援への転換は、AIの教育利用において重要な進歩といえます。

Deep Research機能のSlack統合については、企業の働き方に新たな可能性をもたらします。社内の会話データをAIが分析・統合することで、従来は個人の記憶や断片的なメモに依存していた組織知識の活用が効率化される可能性があります。

しかし、このような機能拡張にはプライバシーの懸念も付随します。Slack内の社内コミュニケーションや学習履歴といった機密性の高い情報をAIが処理することで、データの管理や漏洩リスクが新たな課題となるでしょう。

技術的な観点から見ると、これらの機能は単なる追加機能ではなく、AIの「マルチモーダル化」と「コンテキスト理解の深化」を示すものです。様々なプラットフォームからのデータを統合し、文脈に応じた適切な応答を生成する能力の向上が背景にあります。

また、OpenAIがGPT-5の開発と並行してこれらの実験的機能を展開している点も興味深いところです。小規模な機能テストを通じて、次世代モデルでの本格的な統合に向けたデータ収集と検証を行っている可能性があります。

規制面では、特に教育分野でのAI利用については、各国で議論が活発化しています。学習データの取り扱いや学習成果の評価基準など、新たなガイドライン策定が求められる可能性が高いでしょう。

【用語解説】

Deep Research:OpenAIが提供するChatGPTの機能の一つ。ユーザーの入力に基づいて自動的にインターネットを検索し、情報を収集・整理して詳細な研究レポートを作成するAI機能である。

ソクラテス式問答法:古代ギリシャの哲学者ソクラテスが用いた教育手法。質問を重ねることで相手の思考を促し、自発的な学習や理解を導く対話型の指導法である。

Tibor Blaho:AIPRM社のリードエンジニアで、OpenAIの新機能を頻繁に発見・報告することで知られる技術者。多くの実験的機能を最初に発見している。

【参考リンク】

OpenAI公式サイト(外部)
ChatGPTをはじめとするAI技術の研究・開発を行うOpenAI社の公式サイト

ChatGPT公式サイト(外部)
OpenAIが開発したAIチャットボット「ChatGPT」の公式サイト

Slack公式サイト(外部)
ビジネス向けチームコミュニケーションプラットフォーム

【参考動画】

OpenAI’s Sam Altman Talks ChatGPT, AI Agents and Superintelligence — Live at TED2025
OpenAIのCEOサム・アルトマンによるTED2025での講演。ChatGPTの将来展望とAI技術の発展について語られている。

【参考記事】

ChatGPT is testing a mysterious new feature called ‘study together’(外部)
TechCrunchによるStudy Together機能の詳細レポート

ChatGPT Deep Research tests new connectors for more context(外部)
Deep Research機能の新しいコネクタ統合に関する技術的分析記事

ChatGPT is testing disruptive Study Together feature(外部)
Study Together機能の教育現場への影響分析記事

OpenAI says Deep Research is coming to ChatGPT free “very soon”(外部)
Deep Research機能の無料版への展開に関する最新情報

【編集部後記】

AIが「道具」から「パートナー」へと進化する転換点を目の当たりにしているのを実感しました。Study Together機能は、まさに「AI vs 人間」ではなく「AI with 人間」の未来を体現しています。

興味深いのは、OpenAIが教育現場での「カンニング問題」を逆手に取って、AIを学習促進ツールに変えようとしていることです。これは技術的な解決策というより、人間の学習心理に深く踏み込んだアプローチといえるでしょう。

一方で、Slack統合によって企業の「集合知」がAIによって可視化される未来も見えてきました。これまで会議室の雑談や廊下での立ち話に埋もれていた貴重な洞察が、AIによって掘り起こされる可能性があります。

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乗杉 海
新しいものが大好きなゲーマー系ライターです!

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