Apple『F1』ハプティック予告編でiPhoneが震える|触覚フィードバック技術が開く次世代映画体験

[更新]2025年7月17日18:15

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Appleが映画『F1』専用のハプティック予告編をリリースし、iPhoneの振動機能を活用した新しい映画体験を提供している。

Appleは6月11日(現地時間、日本時間6月12日)、ブラッド・ピット主演の映画『F1』のハプティック予告編を発表した。この予告編はiPhoneのTaptic Engineを使用し、映像と同期した振動により視聴者が「アクションを感じる」ことができる革新的な体験を提供する。

予告編では、フォーミュラワンカーのエンジン音やスピード感、ギアチェンジの瞬間などが振動として手のひらに伝わる仕組みとなっている。Appleによると、各ハプティックシーケンスは映画のビートとリズムに合わせて調整されており、没入感のあるユニークな体験を生み出している。

このハプティック予告編はApple TVアプリで利用可能で、iOS 18.4以降を搭載したiPhoneで体験できる。追加のダウンロードや設定は不要である。

映画『F1』は、1990年代に将来を嘱望されながら事故によりキャリアが頓挫したドライバー、ソニー・ヘイズをブラッド・ピットが演じる作品である。元チームメイトのルベン・セルバンテス(ハビエル・バルデム)から復帰の誘いを受け、新人ドライバーのジョシュア・”ノア”・ピアース(ダムソン・イドリス)とペアを組んでエイペックス・グランプリ(APXGP)チームで最後の挑戦に挑む物語となっている。

監督は『トップガン マーヴェリック』のジョセフ・コシンスキーが務め、脚本はエーレン・クルーガーが担当している。映画は6月25日(現地時間、日本時間6月26日)に国際的に公開され、北米では6月27日(現地時間)に劇場とIMAXで上映される。

from:
Apple released a haptic trailer for F1, and it’s unbelievable | Digital Trends

【編集部解説】

Appleが映画『F1』のハプティック予告編をリリースしたこのニュースは、単なる映画のプロモーション手法を超えて、エンターテインメント業界における新たな体験設計の可能性を示唆する重要な事例です。

まず技術的な側面から見ると、この取り組みはAppleのTaptic Engineの精密性を改めて証明しています。従来の単純な振動モーターとは異なり、Taptic Engineはリニアアクチュエーター技術を採用し、振動の強度や周波数を細かく制御できます。予告編では、F1カーのエンジン音に合わせた段階的な振動の強弱変化から、卓球ボールの弾む瞬間の微細な触覚フィードバックまで、映像と完全に同期した多層的な体験を実現しています。

この技術実装において注目すべきは、iOS 18.4以降という比較的新しいOSバージョンを要求している点です。これは新しいハプティック配信システムをサポートするためと考えられ、Appleが触覚フィードバック技術の進化に継続的に投資していることを示しています。

エンターテインメント業界への影響を考えると、この試みは映画体験の新たな次元を開拓する可能性を秘めています。従来、映画館での4DX上映やVR体験などで物理的な感覚を取り入れる試みはありましたが、個人のスマートフォンで手軽に触覚体験を提供できる点は革新的です。特にモータースポーツやアクション映画といったジャンルでは、エンジンの振動や衝撃を直接感じることで没入感が大幅に向上します。

映画『F1』自体も、ルイス・ハミルトンがエグゼクティブプロデューサーとして参加し、実際のF1グランプリでの撮影を行うなど、リアリティを追求した作品となっています。ハンス・ジマーによる楽曲制作や、エド・シーラン、ROSÉ、RAYEらが参加するサウンドトラックも話題となっており、総合的なエンターテインメント体験の向上を図っています。

マーケティング戦略の観点では、Appleがこの技術を自社の映画作品で先行導入することで、Apple TV+の差別化要因として活用しようとする意図が読み取れます。Netflix『ドライブ・トゥ・サバイブ』の成功でF1人気が高まる中、この映画とハプティック技術の組み合わせは、テクノロジー愛好者とモータースポーツファンの両方にアピールする巧妙な戦略といえます。

将来的な展望として、この技術が成功すれば、ゲーム業界やライブ配信、教育コンテンツなど様々な分野への応用が期待されます。特に遠隔医療での触診シミュレーションや、製造業での技術研修など、専門分野での活用可能性も考えられます。ただし、触覚情報の標準化や、異なるデバイス間での互換性確保といった技術的課題の解決が必要です。

規制面では、触覚刺激による健康への影響や、過度な刺激による依存性の問題も検討すべき事項として浮上する可能性があります。また、アクセシビリティの観点から、聴覚障害者向けの補助技術としての活用も期待される一方で、触覚過敏症の方への配慮も重要になるでしょう。

このハプティック予告編は、単なる技術デモンストレーションを超えて、デジタルコンテンツの新しい表現手法を提示する先駆的な取り組みです。成功すれば、エンターテインメント体験の根本的な変革をもたらす可能性を秘めています。

【用語解説】

ハプティック技術:触覚フィードバック技術の総称。振動、圧力、温度などの物理的刺激を通じて、ユーザーに触覚情報を伝える技術。スマートフォンの振動機能もハプティック技術の一種である。

Taptic Engine:アップルが開発したリニアアクチュエーター技術を使用した触覚フィードバックシステム。従来の回転式振動モーターとは異なり、精密で多様な振動パターンを生成できる。

iOS 18.4:アップルのモバイルオペレーティングシステムiOSのバージョン。2025年前半にリリースされ、新しいハプティック配信機能をサポートしている。。

4DX:映画館での体感型上映システム。座席の動きや風、香り、水しぶきなどの物理的効果を映像と同期させて提供する技術。

APXGP(エイペックス・グランプリ):映画『F1』に登場する架空のF1チーム。ブラッド・ピット演じるソニー・ヘイズとダムソン・イドリス演じるジョシュア・ピアースが所属する設定。

【参考リンク】

Apple(日本)(外部)アップルの日本公式サイト。iPhone、iPad、Mac、Apple TVなどの製品情報や購入が可能。Apple TV+の映画『F1』に関する情報も掲載されている。

Formula 1公式サイト – F1映画特設ページ(外部)F1公式サイト内の映画『F1』特設ページ。映画の詳細情報、予告編、制作陣インタビューなどを掲載。6月23日のファン向けプレミア上映情報も提供している。

Apple TV+(外部)アップルの動画配信サービス。映画『F1』の劇場公開後にストリーミング配信が予定されている。オリジナルコンテンツを中心に配信。

Warner Bros. Pictures(外部)映画『F1』の配給を担当するワーナー・ブラザース・ピクチャーズの公式サイト。アップルとの共同配給により劇場公開を行う。

【編集部後記】

Appleがまた一つ、エンターテインメントの常識を覆す技術を投入してきました。ハプティック予告編という発想自体が革新的ですが、それを映画『F1』で実現したタイミングの絶妙さに、Appleの戦略的な巧みさを感じずにはいられません。

Netflix『ドライブ・トゥ・サバイブ』でF1ブームが再燃している今、モータースポーツの興奮を「触覚」で表現するというアプローチは、まさに時代の流れを読んだ完璧な一手といえるでしょう。エンジンの振動や加速Gを手のひらで感じられるなんて、想像しただけでもワクワクしてしまいます。

ただし、この技術の真の価値は、どれだけ多くのクリエイターが参入し、多様なコンテンツが生まれるかにかかっています。映画業界だけでなく、教育、医療、製造業など、あらゆる分野での応用可能性を考えると、その潜在力は計り知れません。

読者の皆さんも、ぜひこの歴史的な瞬間を見逃さないよう、最新のiPhoneでこの体験を味わってみてください。きっと、デジタルコンテンツの未来が見えてくるはずです。

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乗杉 海
新しいものが大好きなゲーマー系ライターです!

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